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「相続手続き未了と共有のリスク」

2019.09.24

今回の相談者はご姉弟の2名様。お聞きすると、5人兄弟の三女と二男。相談を受けた弊社の担当は、内容を聞く前に困難な案件であろうと感じました。5人の兄弟ということは5人の相続人がいるということです。相続人が増えれば増えるほど、相続はトラブルのリスクが上がっていくものです。
相談内容はご実家の売却について。お父様が20年前に亡くなった後、ご実家はお母様と先天的な障害をお持ちのご長男が住んでいらっしゃいました。2年前にお母様が亡くなられご長男が一人となりましたが、とても一人では生活ができないため、お母様が亡くなられる少し前から施設に入所され、ご実家は誰も使わない空き家の状態となってしまいました。ご相談にいらっしゃったお二人は、この実家を売却し、その代金を長男の施設費用、治療費用に充てたいということでした。
担当がまずお聞きしたのはご実家の所有権について。これはご兄弟全員の共有ということでした。しかし、登記を確認してみると6人の共有となっていました。実は20年前に亡くなられたお父様には、前妻との子供が一人いたのです。当然その方も相続人の一人であるため、共有者に名を連ねていました。共有の不動産を売却するためには、原則共有者全員の同意が必要となります。共有者が6人、うち一人は前妻の子。これは全員と接触するだけでも一苦労となります。
結論から申し上げますと、今回の案件は売却できませんでした。直接の理由としては、前妻とのお子様が認知症を患っていたためです。意思能力がないため売却の同意を得られず、また家族が成年後見人を立てるつもりがなく、方法がありませんでした。今回の場合は、このように共有で相続してしまった時点でかなり難しい状況になっていたということです。ですが実は、ご相談者達も本来は共有で相続するつもりはなかったのです。長女が実家を相続して他の兄弟は金銭を分けるという予定でした。
しかし、20年前もお父様が亡くなった時に、遺産分割協議も実家の相続登記も何もしていなかったのです。その事実に気付いたのはお母様が亡くなられた時。そこで初めて気付いて、相続の手続きをしようと試みましたが、既にお父様の前妻との子は認知症となっていました。遺産分割協議ができなかったため、仕方なく法定相続通りに相続することになったのです。お父様が亡くなられたのが20年前ですから、もしこの時にきちんと相続の手続きをしていればまだ前妻とのお子様も意思能力をお持ちでしたでしょう。この時にそれを怠ったため、売却が困難になったのです。
この後は、前妻とのお子様が亡くなられるまで待つしかありません。ですが、彼が亡くなられるとその子どもに実家の持ち分は相続されますし、相談者側のご兄弟も高齢ですのでそれまでにご兄弟に相続が発生する可能性があります。そうなると共有者はどんどんと増えていき、また相談者とその兄弟にも認知症に発症する可能性もあり、より処分は困難になっていきます。
相続の手続きを怠ったことで、共有者が膨大な数になっていたり、最早誰が共有者なのかも分からなくなっていたり、そういった不動産は非常に多くあります。相続手続きの怠りは、相続人本人だけでなく、そのお子様、お孫様にも大きな負担を残していくことになります。相続の手続きは手間や費用がかかりますが、かといってそれを放置してしまうと後々更に大きな問題となってしまいます。